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あれはまだ私が中学の頃だった。
ピアノのレッスン前に寄った公園で、小学生の
兄妹が駆け寄って来たんだ。
「どうしよう…家じゃ飼えないの…」
両手に収まるくらいの子猫。白黒模様で、鼻に
黒いブチがあって。可愛くて可愛くて、知らな
い顔は出来なかった。
でも私はこれからピアノ。
「ちょっとだけここで待っててね」
迷った末、大人しい子猫に声をかけて、ジッパ
ー付きのレッスンバッグに子猫を入れて、自転
車のカゴに残したまま楽譜だけを持ち、レッス
ンを済ませた。
おしっこしてるかなと思ったけどしてなくて、
お利口だと思ったのを覚えている。
「もうちょっとガマンしてね」
子猫に何度も声をかけながら急いで帰宅した。
厳しい母は、珍しく何かの用でいなかった。い
るのは大抵味方をしてくれる父のみ。
ほくそ笑む私。
やがて母が帰宅。私を全く非難せずに、子猫を
可愛がったのが意外だった。
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