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「オレノモノニナレヨ。」
時間が止まった。
ギクリとして辺りを見回した。
葛城くんの少し茶色いシャギーな毛先が見えた。
向こう側は目を真ん丸にして、頬を真っ赤にした…田辺さんか。
ベランダでしゃがんだりするんじゃなかった。
確かに教室の一番後ろだけど、ちょうどこのクロッカスが陽にあたってなかったから、位置を変えて水をかけてあげたかっただけなんだけど。
このタイミングでそんな言葉が頭の上から降ってくると…、ああ、もうどうしたらいいのか。
ってか、このまましゃがんでるしかないよね。
それにしても、結子ちゃんはショックを受けるだろうな。千明ちゃんもか。
まぁ、相手が田辺さんだと文句の言いようもないのかもね。
けどさー、一四歳でしょ?言う?「俺のものになれよ。」なんて。
あー、ヤだヤだ。あんな男。
「倉田さん!」
あ?
え?
あ、ああ。田辺さんに見つかっちゃったか。
よかった。これで立ち上がれる。
「キコエタ?」
「なに?」
「そこで何してるの?」
「なにって…、花に水を。」
なによ、その軽蔑したような眼差しで見下すようにしたりして。葛城、あんたやっぱりヤな男だ。
「ダイジョーブ。」
そんなこと言って、田辺さんの肩を抱いたりして、あっちに行くのね。
クラスの皆に冷やかされても、ビクともしない。
ふん。一四歳のくせに、いい男気取り。なんなの?
あんたなんて大したことないわよ。
アタシはもっと、イイ男、つかまえてやるんだから!
見てなさい!
あんたなんかにねぇ、「オレノモノニナレヨ」なんて言われたって、このアタシの胸はキュンっ!としたりなんて、しないんだからね!
あれ?
アタシ…。
どうして涙が流れてるんだろう。
またしゃがんじゃった。
あれ?涙、…止まらない。
どうして…?
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