第一章

10/18
前へ
/434ページ
次へ
遊郭に一切情報がない。 ならば偽名の可能性が高い。 私に知られて困るような名前か…… 新撰組の敵となり得る奴だろう。 それにそのうち接触してくる。 「帰った」 「おかえり。何しとったん?」 「情報収集。……上にいる」 私は山崎に戻った報告だけをして屯所の屋根に上がった。 今日も新月。 屋根に寝転び、上を見た。 綺麗に星がよく見える。 「紅さーん」 ひょっこり顔を覗かせる総司。 そして、私の隣に寝転んだ。 「どうした?」 「紅さんって若いですよね~」 「……いきなりなんだ」 横から視線が突き刺さる。 確かに、総司は幼い頃から知っている。 「土方さんと同い年でしたっけ?」 「副長よりは下だ」 「明日、久し振りに勝負しましょう!」 何を言い出すかと思えばまた勝負。 懲りないやつだ。 「仕方ない。気晴らしにやってやる」 「やった!絶対ですからね!」 私に約束を取り付けて下へとおりていった。 私は体を起こし、街を見た。 特に明かりもない街並み。 何かが見える訳でもなく、ただ少しの間ぼーっとしていた。 その時、何やら提灯の明かりが一斉に一箇所で点灯した。
/434ページ

最初のコメントを投稿しよう!

103人が本棚に入れています
本棚に追加