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遊郭に一切情報がない。
ならば偽名の可能性が高い。
私に知られて困るような名前か……
新撰組の敵となり得る奴だろう。
それにそのうち接触してくる。
「帰った」
「おかえり。何しとったん?」
「情報収集。……上にいる」
私は山崎に戻った報告だけをして屯所の屋根に上がった。
今日も新月。
屋根に寝転び、上を見た。
綺麗に星がよく見える。
「紅さーん」
ひょっこり顔を覗かせる総司。
そして、私の隣に寝転んだ。
「どうした?」
「紅さんって若いですよね~」
「……いきなりなんだ」
横から視線が突き刺さる。
確かに、総司は幼い頃から知っている。
「土方さんと同い年でしたっけ?」
「副長よりは下だ」
「明日、久し振りに勝負しましょう!」
何を言い出すかと思えばまた勝負。
懲りないやつだ。
「仕方ない。気晴らしにやってやる」
「やった!絶対ですからね!」
私に約束を取り付けて下へとおりていった。
私は体を起こし、街を見た。
特に明かりもない街並み。
何かが見える訳でもなく、ただ少しの間ぼーっとしていた。
その時、何やら提灯の明かりが一斉に一箇所で点灯した。
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