第一章

13/18
前へ
/434ページ
次へ
「お前なぁ……。狙われてるって分かっててどうしてそう……」 「不穏な芽は早めに摘むべきかと」 帰ったら説教を受けた。 副長はいつまでも私が女だということを忘れない。 そして、辞められるもんならこんな仕事辞めろといつも言う。 でも、私はこれしか生き方は知らない。 「だったら山崎と二人で行くべきだっただろう」 「私が狙われているのが分かったので」 副長はため息と共に紫煙を吐き出した。 私は死んだって構わない。 あってないような命だから。 ただ、貴方に私は救われた。 その恩は一生かけても返すことができるかどうかのもの。 だから、貴方の為に死ねと言われれば喜んで死にましょう。 貴方の身代わりになるくらい簡単なものだ。 「副長がなんと言おうと私は辞めません。そして、貴方の命令がなくとも、動きます」 私はそう告げて部屋を出た。 渡り廊下を歩いていると斎藤一に会った。 「また人を斬ったのか」 「悪いか?私が狙いだったんだ。仕方ないだろう」 そういうと斎藤は私の横を通り過ぎていった。 無口で無表情、何を考えているかわからない場面もある。 それはきっと私も同じだ。
/434ページ

最初のコメントを投稿しよう!

103人が本棚に入れています
本棚に追加