103人が本棚に入れています
本棚に追加
気がつけばもう朝日が昇っていた。
総司と稽古だったか……
私は道場に向かった。
「遅いですよ!」
珍しい。
あの朝の弱い総司が私より早くに道場にいる。
雨でも降るのだろうか。
「楽しみにしてたんですから!」
「分かったから」
総司に竹刀を渡された。
私は受け取り、上から下に振り下ろした。
久し振りに握る竹刀。
しっくりはこないが、負けたくはない。
「行きますね」
私は頷いた。
総司が一歩前に出た瞬間、私は後ろに飛び退いた。
だが、それを総司が逃す筈もなく、追いかけるように向かってきた。
乾いた音が道場に響いた。
「流石ですね」
「これくらい当たり前」
ただ総司の攻撃を防いだだけだ。
私はしばらく防戦一方だった。
飛び退いては防ぎ、かわしては防いでいた。
「攻撃してこないんですか!」
「うるさい」
攻撃しない訳じゃない。
ただ見ているだけ。
「まだまだ甘いな」
総司が突きを出した時だった。
私は体を捻って避け、総司の懐に潜り込んだ。
そして、竹刀を首に突きつけた。
「お前の負けだ」
最初のコメントを投稿しよう!