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目が覚めた時には辺りは暗かった。
「やっと起きたんか。珍しく寝とったな」
「……いたのか」
「いるで!?そーいや、副長が呼んどるわ」
私は背伸びをしてから部屋を出て副長のもとに向かった。
「ご用はなんでしょう?」
「おう。琴に返事書いてやれ」
「お琴に?どうして私が……」
副長に文を渡された。
それには私の近況が知りたいとのことが書かれていた。
お琴は副長の許嫁だ。
副長の帰りを日野で待っている。
『紅ちゃん、土方様のことをお願いね』
そう言われたのを思い出した。
可愛らしく笑う女の子だった。
健気に待っていることだろう。
「女の人からの文が絶えませんって書いて差し上げましょうか?」
「やめろ、馬鹿。俺は返事書いてねぇだろうが!」
クスクスと笑いながら私は筆を進めた。
お琴へ
私は元気です。お琴も元気そうで何より。
副長だけでなく、みんなも相変わらず元気です。
別にこれといって変わったことはないです。
ただそっちにはいつ帰ることができるかは私にはわかりません。その辺は副長に。
私のことなど気にかけないで下さい。
いていないような存在です。
副長は守ります。
命に代えても。
紅
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