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「もうちょっと気の利いた言葉くらい書いとけよ」
「……何覗いてるんですか。副長じゃないのでそんな気の利いたことは言えません」
「おい、てめぇ……どういう意味だ!」
私は副長に文を託して部屋をさっさと出た。
お琴はいつもそう。
私のことを気にする。
昔に私が血だらけで帰ってきた時もそう。
顔を真っ青にしながらも私のことを心配してきた。
全て、返り血だというのに。
人が良すぎる。
もう私のことなど忘れてしまえばいいのに。
「紅さん、寝ないんですか?」
眠そうにしながら歩いてくる総司。
総司は私がいつ寝ているか知らない。
「私はまだやることがある」
「そうですか。おやすみなさい」
別にやることなんてない。
私は必要とされなければその身を隠すだけ。
「紅さん、またやりましょう。次こそは負けません」
くるりと振り返って笑う総司。
私はフッと笑った。
「次も総司が負けるぞ」
まだまだ負けない。
私には守らなければならない人がいる。
その人の為に私は負けられない。
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