第一章

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数日後のことだった。 「紅、文が届いてるぞ」 斎藤に手渡された文に名前はない。 ただ私の名前だけが書かれている。 私はその文を開いた。 僕のことを覚えているかい? 君に会いたくて文にしてみたんだけど。 覚えているなら前に君と会った場所で待っているよ。 たったそれだけだった。 だが、それでも私は分かった。 「出かける。何かあれば山崎に伝えてほしい」 私は斎藤にそう伝え、着替えて屯所を出た。 忘れるはずがない。 私のクナイを弾き飛ばし、目の前から去って行った人のことを。 「やあ。来てくれると思ってたよ」 「用件はなんだ。わざわざ呼び出しておいて」 路地裏で栄太郎と言う男に会った。 こいつしかいないと思っていた。 「ねぇ、何で土方なんかに仕えているのさ。あんな百姓上がりの奴なんかにさ」 「私が救われたからだ」 「紅が?……あっははは!!」 なんなんだろうか。 この違和感は。 前から私のことを知っているような口ぶりで言っているが、私はお前を知らない。
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