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「紅の価値が下がる」
「私に価値など元々ない」
笑っていた顔は一変し、表情が消えた。
殺気が溢れている。
「どうして?君はこちら側の人間でしょう?」
そう言った瞬間に前と後ろを挟まれた。
隠れていたようだ。
私は着物の裾を帯に挟んだ。
「こちらもあちらもない。お前は一体、何を見ている?」
目の焦点が合っていないことに気付いた。
気をおかしくしている。
私が足のクナイに手をかけると雪崩のように両方から突っ込んできた。
私はクナイを壁に刺し、屋根へと上がった。
「追いかけてこい。人のいないところで始末してやる」
まだ夕方で日は沈んでいない。
そんな中でやりあって一般人を巻き込めば最悪だ。
それにお互い、そんなところでやれば役人に捕まるだけだ。
「追え!!」
栄太郎の一言で動き出した。
私は屋根を伝い、人のいない場所に向かって走った。
時々後ろを振り返り、ついてきているか確認した。
見事に全員ついてきていた。
ただ、問題は大した道具もない中どう対処するかだ。
相手から刀を奪えば済む話か。
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