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今日は新月。
探すには絶好の機会。
何故なら、提灯の灯がよく見えるからだ。
私は少しでも遠くに逃げる為に夜道も進んでいるだろうと考えた。
この私がいると知りながらも。
よく逃げようと思ったものだ。
私は夜目が利くらしい。
これが当たり前だと思っていたが、そうでもなかった。
そのために、昼の光は少し眩しい。
私は屋根に飛び乗り目を細めて遠くを見た。
ちらほらと見える提灯の灯。
見つけた。
私は駆け出した。
誰もいない夜の道は走りやすい。
邪魔者もいない。
「早川だな」
私は首元にクナイをつきつけた。
隣には女がいる。
女が叫びそうになったので私は口を塞いだ。
「叫ぶな」
コクコクと頷く女に口から手を離しクナイをつきつけた。
「べ、紅さん……!」
「私がいると知って、何故脱けた?駆け落ちの為か?」
女がいる時点で駆け落ちの類だろう。
身なりはそれなりにしっかりしている。
通い詰めた女郎屋の女か何かだろう。
くだらない。
「好いた女と一緒にいる為です!」
「ならば金でも貯めて身請けをすべきだった。脱走したところで私に捕まるのは目に見えていただろう」
「一隊士の俺にそんな金なんてある訳ないの知っていたでしょう!?」
「それでも好きになったのはお前だ。……私には理解できないがな」
人を好きになる、そんなもののどこが楽しい。
無駄なものとしか感じない。
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