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「戻るか、此処で私に殺されるか。どちらがいい?」
「どちらにしろ殺されるなら此処で死ぬ!心中する!」
「そうか」
私はつきつけていたクナイを一文字に切った。
早川は血を吹き出しながらその場に倒れた。
それを見ていた女は顔面蒼白となっていた。
「お前も死ぬか?心中するか?」
「い、いや……!まだ死にとぉない……!」
「ならばこのことは他言無用だ。誰に少しでも話せば私はお前も殺す」
女はコクコクと何度も頷いた。
私がクナイを離すと女はその場に崩れ落ちた。
所詮、こんなもんだ。
くだらない。
こんなものの為にこいつは命を落とした。
馬鹿馬鹿しい。
私は早川の死体を騒ぎにならないよう処分した。
そして、副長に報告する為に屯所へと戻った。
「副長、終わりました」
「おう。あいつと一緒にいないところを見ると拒んだな」
「はい。駆け落ちする為でした」
私は簡単に報告し、その場を去った。
新撰組を脱走する者は多々いる。
その理由は様々だが、女との駆け落ちが何かと多い。
だが、鉄の掟がそれを許さない。
『局中法度』
これが存在する限り。
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