第一章

8/18
前へ
/434ページ
次へ
「お前は誰だ」 「栄太郎とでも言っておこうかな」 栄太郎…… そんな名前は聞いたことがない。 だが、あっちは明らかに私のことを知っているような素振りだ。 「新撰組なんかにいないで僕のところにおいでよ、紅」 私の名前まで知っている。 どういうことだ…… 「悪いが、お前には興味がない」 「だよね。君さ、何処の忍?伊賀?甲賀?」 「私は集団に属さない」 足に巻いていた道具に手をかけた。 「そんな綺麗な足見せないでよ。今日は別に戦いに来たわけじゃないし。またね」 「私が逃すとでも思ったか?」 クナイを投げると栄太郎はすぐさま抜刀し、弾いた。 そして、何事もなかったかのように刀を納め、帰っていった。 深くは追わなかった。 また何処かで必ず接触してくると思ったからだ。 私はクナイを拾い、二人の元へ戻った。 「何処行ってたの?」 「気になることあって」 私はパクパクと団子を勢いよく食べた。 「平助、ご馳走さま。やる事が出来たから帰る」 私は急いで屯所に戻った。 医務室で着物を脱ぎ捨て、いつも着ている装束に着替えた。 「まぁた脱ぎ散らかして!」 「……頼んだ」 私は日が沈むのを待ってから屯所を出た。
/434ページ

最初のコメントを投稿しよう!

103人が本棚に入れています
本棚に追加