第一章

9/18
前へ
/434ページ
次へ
向かうは島原遊郭。 「君菊、いるか?」 「紅。何の用なん?」 「栄太郎と名乗る男はいるか?」 沢山の情報が集まる島原には私に協力してくれる仲間がいる。 大津屋の芸妓である君菊と輪違屋の花君太夫がいる。 私にとっての貴重な情報源だ。 危ない時は私が潜ることもある。 「栄太郎……?知らんなぁ。何処のお人なん?」 「知らない。今日、私に接触してきた」 その時、話し声と足音が近付いてきた。 「何かあれば鴉に文を。頼んだ」 私は襖が開かれる前に屋根に飛び移った。 私は輪違屋に向かった。 花君太夫は位が高いためにこの時間は接触できない。 太夫に会うためにどれほどの金を積み、この時間を買っているのだろうか。 私には到底理解できない。 外の戸が開くのを待った。 「紅……?」 花君太夫と目が合った。 私は戸が開いたところに寄った。 「今、時間あるか?」 「少しならね。まだ次にお客はんがいるんよ」 「栄太郎という男は知っているか?」 花君太夫は君菊と同じような表情を見せた。 知らないのか…… 「もし何か分かれば連絡して欲しい。自分の身を第一にな」 「おおきに。ほなまた」 花君太夫は戸を閉め、他の客のもとへと向かった。
/434ページ

最初のコメントを投稿しよう!

103人が本棚に入れています
本棚に追加