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負け組
この物語を進める上で1つ、言っておきたいことがある。
誰しもが忘れてしまいたい記憶というものを何かしら持っているものだ。
それは些細な事なのか、はたまた重大な事なのか...。それは実際に掘り起こしてみない事には分からないが、封じ込めたその記憶を掘り起こす事は今後の自分の人生にとってかならずや大きなスパイスとなってくれるだろう。
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負け組。そんな風に呼ばれるようになったのはいつからだったであろうか。
私は地元の公立高校を落ちて仕方なく私立高校に通いロクに勉強もせず、特に部活というものもやらずになんとなく過ごし学校のコネで大学に進学した。私の通う大学自体はそれほど低いランクの大学ではないが、私のいる学部はどうやら大学の足を引っ張っているらしい。
大学に入ってからは。
などと意気込んだ時期もあったが今やダラダラと講義に出たり出なかったりの日々。
つくづく思う、いつからだったであろうかカラの破り方を忘れた蛹のようになってしまったのは。
そして残酷な事にもシャンと背筋を立てまっとうな人生を送っている人間にも、私のような堕落した人間にも時間だけは平等にすぎるもので、先ほど駅でスマホを見た時に気づいたのだが、どうやら今日は私の誕生日らしい。
今日をもってして私は20歳となり大人の仲間入りをするようだが、大丈夫であるのかそうでないのかは自分が1番分かっているつもりだ。
押し出されるように電車から降りた私は人波に流されるように帰路をたどる。
通り慣れた駅の階段を降り足早に家へと向かおうした時、私は薄汚れた看板に目を奪われた。
[バー.マトリョシカ]
私は磁石のようにその古びた看板に吸い寄せられた。今日20歳になったばかりの私がバーなどに行っても大丈夫なのだろうか。
しかしその看板と木のドアからはなぜか懐かしさを感じる。
気まぐれに私はそのドアを潜ってみることにした。
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