伍:囚《とら》われの神女《めがみ》

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「う、うん。ありがと……」 文字どおりの神々しさが白い神の獣から放たれ、咲耶は言葉につまる。(おそ)れを、初めて感じた。 と同時に、自分の内側に、なんともいえない高揚感がわきあがった。 この美しき獣が咲耶を必要とし、愛しい者として認識してくれている。 美しさも気高さも、底知れない『力』も、すべて咲耶の手中にあるのだ──。 高鳴る胸は自らの責任の重さを物語るが、それでも咲耶は、目の前の“神獣”の姿をした和彰こそが(・・・・・)愛しい。 「ギュッ……って、してもいい?」 『……ぎゅっ?』 理解できない()を繰り返して、和彰が問う。汚れを知らない青い瞳が、咲耶をじっと見つめ、小首をかしげる。 咲耶は衝動に突き動かされて、白い毛並みの猛獣に腕を回した。 抱きしめるというより、抱きつくといった体裁になるほどに成長した、『白い神の獣』。 内なる純真な魂に、呼びかける。 「あのね、和彰」 交わす言葉は、飾り気のないものばかり。 けれども、いつも咲耶の抱える想いを気遣ってくれる存在。
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