弐:人ならざる半獣《もの》

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『仕事の領域』、とでもいうのだろうか? それは、やはり分別をつけなければならない気がすると、咲耶は考えていた。 そこへ、椿から声をかけられ返事をすると、 「姫さま宛てに、文が届きました」 と、螺鈿(らでん)細工が施された漆塗りの長方形の箱を持ち、椿が室内に入ってきた。 「……私に? 何かの間違いじゃない?」 咲耶が【こちら】に()ばれたのは、昨晩のこと。 知人はおろか、顔見知り程度の者ですら、皆無に近いのだ。 そんな自分に手紙を寄越す者がいるとは、考えにくい。 「いいえ。 ハク様の(つい)の方……つまり姫さまにと、承りました」 やんわりと椿に否定され、咲耶は不思議に思いつつ、文箱(ふばこ)を受け取る。 ちょう結びされた、赤・黒・銀の三色を編み込んだ(ひも)をといて、ふたを開けると、和紙が折りたたまれていた。 開くとほのかに芳香が漂い、咲耶は一瞬、良い気分になったが、直後に顔をしかめた。 (ミミズがのったくってる……) いわゆる草書が、墨で書かれていた。 かな混じりの漢字であることは解るのだが、なんとか拾い読みしようにも、咲耶の気力は途中で燃え尽きた。
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