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「私はあなたの“主”で、私の言うことを聞くのが、あなたの『理』だっていうのは分かったわ。
だけど、それでも私は、私が判断に困った時や迷った時は、あなたに一緒に考えて欲しい。
だって……それが、『伴侶』ってことだと思うから」
『──……分かった』
胸のうちに届く声は不思議なほどに優しく、あたたかなものだった。
空間を震わせて伝わる声音とは、違うからだろうか? それは、和彰の魂の響きなのかもしれない。
やわらかな被毛を感じながら、ふと咲耶は、そんなことを思った。
『──咲耶。私もお前に願っても良いか』
投げかけられた言葉に、咲耶はくすっと笑う。
「なに? 私にできることなら、言ってみて?」
身を起こして答えると、白い虎の前足がひょいと持ち上がり、咲耶の片腕をぽすっと押した。
『私もお前をぎゅっとしたい。だが、獣のままではできない』
人の姿になっても良いか──そう続けて問いかける白い“神獣”の鼻づらが、咲耶の鼻に寄せられる。
咲耶は、乞う必要のない許しに対し、笑ってうなずいた。
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