伍:囚《とら》われの神女《めがみ》

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「私はあなたの“主”で、私の言うことを聞くのが、あなたの『理』だっていうのは分かったわ。 だけど、それでも私は、私が判断に困った時や迷った時は、あなたに一緒に考えて欲しい。 だって……それが、『伴侶(はんりょ)』ってことだと思うから」 『──……分かった』 胸のうちに届く()は不思議なほどに優しく、あたたかなものだった。 空間を震わせて伝わる声音とは、違うからだろうか? それは、和彰の魂の響き(・・・・)なのかもしれない。 やわらかな被毛(ひもう)を感じながら、ふと咲耶は、そんなことを思った。 『──咲耶。私もお前に願っても良いか』 投げかけられた言葉に、咲耶はくすっと笑う。 「なに? 私にできることなら、言ってみて?」 身を起こして答えると、白い虎の前足がひょいと持ち上がり、咲耶の片腕をぽすっと押した。 『私もお前をぎゅっとしたい。だが、獣のままではできない』 人の姿になっても良いか──そう続けて問いかける白い“神獣”の鼻づらが、咲耶の鼻に寄せられる。 咲耶は、乞う必要のない許しに対し、笑ってうなずいた。
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