弐:人ならざる半獣《もの》

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「……椿ちゃん。 悪いけど、要約してもらえる? できるだけ短く」 三十路間近の自分が、十代の少女に解読を求めるのは、恥かも知れない。 だが咲耶は、解らないことを解ったようなふりをするのは、性に合わなかったのだ。 椿は、そんな咲耶を馬鹿にしたりあきれたりするような素振りはつゆほども見せなかった。 丁重に咲耶から受け取った文に目を通すと、わずかなのちに言った。 「───セキ様と、セキ様の対の方様からの文で、屋敷に招きたいので都合の良い日を教えて欲しい、と、あります」 「セキ様って……赤虎(せきこ)ってコト?」 朝食後、少しだけ椿から聞かされた話によれば。 この国───“下総(しもうさ)ノ国”には、三体の“神獣”がおり、ハクコの他に、赤い虎の赤虎、黒い虎の黒虎(こくこ)が存在するという。 儀式の直前、咲耶の前に現れた少年が黒虎───名は闘十郎(とうじゅうろう)というらしい。 二十歳前後の美女は、黒虎の“花嫁”百合子(ゆりこ)だろうと、椿が教えてくれた。 「お返事は、いかがなさいますか? 姫さま」 「うーん……。 実は、ちょっと会ってみたいかななんて、思ったりもするんだけど。 ……椿ちゃん、どう思う?」
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