弐:人ならざる半獣《もの》

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「そうですね……。 わたしも、直接お会いしたことはないのですが、セキ様の“花子(はなこ)”であるお(きく)さんから聞いた話からすれば、姫さまの害になるようなことは、ないかと思われます」 椿によると、“花子”というのは“神獣”と、その“花嫁”の世話をする者をいうらしい。 ちなみに、魚類の『穴子』と同じ発音をしている。 自分と同じく【ここではない何処か】から、喚ばれてしまった“花嫁”。 咲耶にとっては、いわば【先輩】にあたる人物が、屋敷に招きたいと言ってくれているのだ。 できるなら、会って、話をしてみたい。 「じゃあ、今日これから会ってみたい! ……なんていうのは、ムリかな、やっぱり」 冗談半分に咲耶が言うと、椿は手もとの文を一瞥(いちべつ)した。 「あちら様は、姫さまのご都合がよろしければ本日でも構わないとも、おっしゃっておられますが」 「そうなの?」 「はい。───では、そのように、使者どのにお伝えいたしますか?」 軽い驚きも束の間、椿が言いつないだひとことに、もう一度、咲耶は驚かされた。 「え……えっ? 使者どのって……ひょっとして、いま現在、私の返事を待ってる人がいるの?」
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