弐:人ならざる半獣《もの》

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ぽかんとする咲耶の前で、サルが頭をかきながら、人語をしゃべっている。 奇怪な状況に、咲耶は、やはりこれは夢なのかもしれないと思い、呆然とその場に立ち尽くしていた……。 「では、その旨、しかと承りましてございやす。───御免!」 言うなり、法被を着たサル……もとい、猿助は、煙のように消え去った。 あとには未だ事態がつかめず放心状態の咲耶と、猿助の機関銃のごとき一方的な話しっぷりに閉口しつつも、咲耶の代わりに返答してくれた椿が残った。 「……驚かれているのですね、姫さま?」 「え? いや……だって、サルが服着て話してるって、なかなかシュールっていうか……」 しゅうる? と、一瞬首を傾げたものの、椿はいたずらっぽく笑って咲耶を見上げた。 「姫さま。 姫さまは、“神獣”の御姿(みすがた)にお戻りになったハク様をご覧になっているはず。 そう驚かれることでは、ないのではありませんか?」 「うん。あれはビックリしたけど。私、驚きよりも、嬉しさが先に立っちゃったんだよね。 だってホワイトタイガー……あ、白い虎ってめずらしいし、それに好きだから」 「まぁ……!」
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