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咲耶の言葉に、椿が頬を染める。次いで、にっこりと微笑んだ。
「姫さまは、率直な物言いをなさるのですね。ハク様も、お幸せですわね」
なんの気なしに口をついた言葉が誤解を招いている。
咲耶は否定しかけたが、それよりも前に、椿が語りだした。
「わたし……ハク様にお仕えするのは、少し……ほんの少しですけれど、その……おそろしかったのです。
ハク様は、他の虎さま方と違うって聞いておりましたし、実際にお側にあってからも近寄りがたくて……」
咲耶の顔色を窺うように、ためらいながら話す椿に、咲耶は、初めて歳相応の少女の姿を見た気がした。
「何をお考えになられているのか分からないと申しましょうか……。
もちろん、“神獣”という尊い御方であられるわけですから、わたしのような下々の者が、お心うちを察するなど、おこがましいのかもしれませんが───」
そこまで言いかけ、椿は、ハッとしたように口もとを押さえた。
いきなり、その場にひれ伏す。
「申し訳ございません! つい、出すぎた口を……!」
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