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《三》
赤虎の屋敷へ行く、辺りを草木に囲まれた道中。
咲耶は、隣を歩く【青年】に目をやった。
(なんていうか……シュールだけど、ちょっと……いや、かなり格好良いかも……)
法被を着たニホンザルに続いて咲耶の前に現れたのは、白い水干を身にまとった、二足歩行をする黒虎毛の甲斐犬だった。
精悍な顔つきで人語を話す───ハクコの“眷属”らしい。
咲耶の護衛を兼ねて、道案内をしてくれている。
「あの~……私、あなたのことをなんて呼べばいいんですかね?」
椿から道順だけを聞いて、一人で赤虎の屋敷へ向かおうとしたとたん、縁の下から現れた存在。
猿助のこともあったので、驚きは半減だったが、それでも『犬の顔』で言語を操られるのは、違和感をぬぐえない。
……ぬぐえないが、同時に、昔読んだ童話やおとぎ話を【現実で体感している】ような、妙な感動を覚えるのも確かだった。
堂々とした歩行を見せていた犬の“眷属”は、咲耶の問いかけにピタリと足を止めた。
その反応に、ハクコとの最初の頃の会話を、思いだしてしまう。
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