弐:人ならざる半獣《もの》

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      《三》 赤虎の屋敷へ行く、辺りを草木に囲まれた道中。 咲耶は、隣を歩く【青年】に目をやった。 (なんていうか……シュールだけど、ちょっと……いや、かなり格好良いかも……) 法被(はっぴ)を着たニホンザルに続いて咲耶の前に現れたのは、白い水干を身にまとった、二足歩行をする黒虎毛の甲斐(かい)犬だった。 精悍(せいかん)な顔つきで人語を話す───ハクコの“眷属”らしい。 咲耶の護衛を兼ねて、道案内をしてくれている。 「あの~……私、あなたのことをなんて呼べばいいんですかね?」 椿から道順だけを聞いて、一人で赤虎の屋敷へ向かおうとしたとたん、縁の下から現れた存在。 猿助のこともあったので、驚きは半減だったが、それでも『犬の顔』で言語を操られるのは、違和感をぬぐえない。 ……ぬぐえないが、同時に、昔読んだ童話やおとぎ話を【現実で体感している】ような、妙な感動を覚えるのも確かだった。 堂々とした歩行を見せていた犬の“眷属”は、咲耶の問いかけにピタリと足を止めた。 その反応に、ハクコとの最初の頃の会話を、思いだしてしまう。
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