弐:人ならざる半獣《もの》

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「よかった、お父さんがいてくれて」 正直、迷子を送り届けられるような余裕は、咲耶は【あちらでもこちらでも】持ち合わせてはいない。 だから思わず本音がでたのだが、男親は、ぎょっとしたように咲耶を見た。 「あんたは、まさか……!」 言った男の目が咲耶の全身を注視する。視線が、胸もとを押さえた右手で止まった。 「やっぱりな……。 あんた、白い虎の“供物”だろ? 気の毒に。 まぁ、俺らには関係ねぇことだけど【“供物”に食い物をやってる身】から言わしてもらうとだな。 いいかげん、役に立たねぇ神様はいらねぇってこった。 【でかい獣】を(ふと)らせるだけで、こちとら一向に恩恵にあずかれねぇ。 できそこないの“神獣”を、いつまでも【飼ってる】お公家サマの考えることは分からねぇが……いい迷惑だ!」 ぺっ、と、地面につばを吐き、子供の父親が咲耶をにらむ。 ぞくぞくとする感覚が、いっそう咲耶のなかで強くなる。 直後、だった。 頭のてっぺんが、ぐいと上に引っ張られるような気分にとらわれた。 ───勝手に、口が開く。 「只人の分際で、よう申した」
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