弐:人ならざる半獣《もの》

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底冷えを誘うような声音が、自分の口をついてでた。突風が、子供と男親のあいだを、裂く。 「(わらわ)を“供物”と(さげす)むとはの。 今はこの身にあらぬ“神力(しんりき)”も、じきにいかようにも遣いこなせるはずじゃ。 その時に後悔しても、知らぬぞえ? ───目障りじゃ、()ね!」 一喝と共に意に反して動く咲耶の右手。立ち去れと、親子を追い払うようなしぐさをして見せる。 咲耶の豹変(ひょうへん)に震えあがった父親は、子供を抱きかかえ、抜け出てきた茂みへともぐり、逃げて行く。 と、同時に、咲耶の身体から力が抜けた。 地面に倒れこみそうになる刹那(せつな)、犬貴の腕が咲耶を支えた。 「───申し訳ございません、咲耶様」 本当に申し訳なさが表れた声。 咲耶は、言ってやろうとしていたことの半分も、言えない自分を感じた。 「……だね? いまのは、ちょっと……やりすぎだと思うよ……?」 傍観者のような立場からすると、犬貴は、道に迷った親子を怖がらせただけのようにも見える。
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