弐:人ならざる半獣《もの》

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だが一方で、“神獣”として(あが)められていると思っていたハクコ達が、実は権力者の愛玩動物扱いされているのだという認識が、咲耶のなかに加わった。 だからこそ、忠実で律儀そうな犬貴が【怒った】のだろう。 咲耶は深呼吸した。 ……情報量が少なすぎて、ずっと自分の立ち位置がつかめずにいた。 だから、判断できないことは、先延ばししてきてしまった。 (でも、それじゃ、いけなかったのかもしれない) 椿に「姫さま」と呼ばれ、犬貴に「咲耶様」と敬われ、いい気になっていた。 まるで『裸の王様』だ。 犬貴は“眷属”である自らのことを、ハクコと咲耶の『盾』であり『剣』であると、初めに言っていた。 そしてハクコは、 「お前が、私の(あるじ)であるという、(あかし)だ」 と言い、咲耶に『白い(あと)』をつけた。 つまり───【扱うべきは】、咲耶のほうなのだ。 (私に何ができるかは分からないけど) 椿も犬貴も、そして、ハクコも。 こんな自分を頼りにしてくれている。 それが盲目的な根拠のない信頼だとしても、咲耶は彼らの一途な眼差しに、応えたいと思ってしまった。 「【犬貴】」 呼びかけに賢い“眷属”は気づいたのだろう───【仮の主】が主たる己を主張しようとしていることを。 ゆっくりと咲耶から離れ、片ひざをつき、(こうべ)を垂れた。
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