弐:人ならざる半獣《もの》

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「私は、この世界のこともハクコのことも、まだよく解っていない。 だから犬貴が、そんな頼りない私の【矜持(きょうじ)を護るため】にしたことも、理解は、できる。 でも」 そっと、犬貴の頭に手を置く。 ……扱うべきは、自分。 「これからは、私の意思を無視するようなことは、しないで。これは、主命」 「───はい」 厳しい口調で言いつける咲耶に、犬貴が低くうなずく。 それを見届け、咲耶は犬貴と目線を合わせた。 「でも、さっき犬貴が、私を護ってくれようとしたのは、嬉しい。 ……頼りない主で、ごめんね。 ちゃんと犬貴に釣り合う主になるように、いろいろ学ぶから。 だから、これからもよろしくね」 わずかに見開かれた犬貴の眼が、おもむろに伏せられる。 「……仰せのままに」 それは、微笑みに、似て。 咲耶は口角をあげてうなずくと、犬貴に赤虎の屋敷への案内をするよううながした。 ───【主としての】自分に足りないものを、少しでも補うために。
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