弐:人ならざる半獣《もの》

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      《四》 「───では、私はいったん、お側を離れます。 この先はセキ様の領域内ですので問題はないかと存じますが……。 もしもの際は、お呼びいただければすぐにでも咲耶様のもとに参ります」 「ありがとう、犬貴。じゃあ、帰る時、呼ぶね」 片ひざをつき、こうべを垂れる犬の“眷属”の頭に、ちょん、と、手をのせてやる。 応えるように巻尾を二三度振り、現れた時と同じように、犬貴は一瞬にして消え去った。 赤虎の住まいは、森林のなかに突如として出現するようなハクコの屋敷同様、生け垣に囲まれた、書院造り風の屋敷だった。 応対に出てきた三十代後半くらいの女性が、おそらく赤虎たちの“花子”の菊だろうと、咲耶は思った。 「セキコって、どんな感じの人かな?」 会う前に多少の予備知識が欲しくて、道中、犬貴に問いかけた。 黒虎・闘十郎には、儀式の前に一度、会っている。 咲耶の印象としては、少なくともハクコよりは気安い少年に思えた。 だが、一緒にいた百合子は、同じ“花嫁”でありながらどこか遠い存在に感じ、気軽に話せそうな雰囲気ではなかった。
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