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「───あるべき良識を、お持ちの方のように、お見受けします。ですが、その……」
犬貴は言いよどんだが、咲耶の視線に根負けしたように続けた。
「少し、風変わりな……と、いいましょうか……。
ああ、いえ、私が風流を、解さないだけかもしれませんが……。
その……、変わったご趣味がおありかと、存じます」
犬貴が言葉をにごしたのが若干、気にはなったが。
犬貴をもってして「良識をもっている」と言わしめるのなら、咲耶の知りたいこと、知っておかなければならないことを、正確に教えてくれるだろう。
客間らしき座敷に通されて間もなく、廊下を歩く衣ずれが聞こえ近づいてきた。
「待たせたわね」
現れたのは、赤地に銀刺しゅうの入った豪奢な打ち掛けに、黒い袿を身にまとった、ゆるやかに波打つ赤褐色の髪の、あでやかな───美青年、だった。
気だるげに脇息にもたれ、咲耶を見つめる瞳は、鮮やかな光を放っている。
「へぇ……年増って聞いてたけど、こうして見ると、ハクと釣り合うくらいの歳に見えるじゃないの。
───バカ供は、女は若けりゃいいって思ってるんだから、仕様がないったら」
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