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溜息をつきながら、胸もとに垂れた赤褐色の髪を払う。
ハクコが静の美貌の持ち主なら、セキコは動の美貌の持ち主だろう。しかし───。
「うん。アンタ、なかなか可愛いじゃない。アタシ好み。
ま、ミホに次いで、といったところだけど」
……この口調は、いかがなものだろうか? この立ち居振舞いも。
決してごついわけではないが、男っぽい体格をしているので、似合わない気がするのだが。
(……犬貴が口ごもったわけが、解ったわ)
「ちょっと!」
ぱちん、と、セキコが手にした扇を鳴らした。
着物同様こちらも、派手な飾り緒がついた美しい檜扇だった。
「一方的に、アタシにばっか、しゃべらせてるんじゃないわよ。
アンタ、何しにここに来たの?」
それまでの軽口をたたいていた調子を一変させ、挑むように咲耶を見るセキコに、思わず咲耶は姿勢を正す。
真意を問われてることに、気づいたからだ。
この場合、
「お招きいただき、ありがとうございます」
などという、型通りのあいさつが求められていないことは明らかだった。
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