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当初の目的の通り「遊びに来た」と言えば、咲耶の知りたいことの半分も知らされぬまま、丁重なもてなしを受けるだけで帰されてしまうことだろう。
「私に、この世界───この国の仕組みについて、教えてください」
畳に指をついて、頭を下げる。
セキコが、ふうっ……と、息を吐いたのが分かった。
「なんで、アタシに訊くの?
そういうことはハクか、ハクの“眷属”に訊くのが、筋なんじゃない?」
突き放すような物言いに、咲耶は顔を上げ、セキコを見た。
「ハクコには改めて【違うこと】を訊く予定です。
犬貴は……都合の悪いことは、教えてくれなさそうなので」
咲耶の答えに、セキコは扇を開き口もとを隠してくくっと笑った。
細めた明るい鳶色の瞳で、咲耶を見返す。
「“花嫁”としての自覚はあるわけね。
……そう。【親しくなるべき】は、アタシじゃない。
そして、【護ること】をはき違える“眷属”もいる。しつけ次第だけど。
どうやら、ムダに歳をくってはいないようね。───菊、あれ」
「承知いたしました」
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