弐:人ならざる半獣《もの》

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セキコは書いていた和紙をグシャグシャと丸め、ぽいっと放り投げる。 くずかごを手にした菊が、寸分狂わず受け止めた。 咲耶は、ここへ来る途中に出会った男の子の父親を思いだす。 ……確かに、セキコの言う通りだろう。 「でも……そういう恩恵って、私のいた世界じゃ『天の恵み』ってことで、人の力の及ばぬところから受けるもの、って、考え方でしたけど。 ここでは……というか、セキ──(あかね)さん達に、何か特別な力とかって、あるんですよね? 犬貴が神力がどうのって、言ってたくらいだから」 「ん~……まぁ、あるといえばあるし、ないといえばないのよねぇ、アタシ達には(・・・・・・)」 筆を手にしたまま、セキコこと茜は、脇息に頬づえをつく。 「……ないんですか? 変な──じゃない、人語を話す猿を配下にしたり、綺麗な虎に変わったりする力は、あるのに?」 咲耶が「綺麗な虎」と言った瞬間だけ、わずかに眉を上げた茜だが、おどけるように肩をすくめた。 「残念ながら遣えないのよね~、民が期待するような神力は。 咲耶のいう通り、変な(・・)猿や犬やきじを配下にすることは可能だけど。 ──だから、アンタ達“花嫁”が必要になるってワケ」
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