弐:人ならざる半獣《もの》

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「えっ……」 ぴたりと咲耶に筆の先を合わせ、茜が真顔になる。 ふたたび、和紙を取り上げ、(すずり)に筆をつける。 「アタシ達にはそれぞれ、司る“役割”がある。 『赤い神の獣』は、懐胎と生を。 『黒い神の獣』は、破壊と死を。 『白い神の獣』は、治癒と再生を。 民が望めば、それぞれが与えることになっているわ。 だけど」 茜は、口にした言葉を短く記していく。 咲耶は耳で聞きながら、目で確認した。 「“役割”は、アタシ達が行えるものじゃない。 行うのは、『神の獣の伴侶』……つまり、“花嫁”が代行することになっているの。 正確には、“花嫁(・・)の意思でしか(・・・・・・)扱ってはいけない力───咲耶が言ってた意味の“神力”は、これに相当すると思うわ。 だからアタシ達には(・・・・・・・)遣えないって、言ったのよ」 「えーと……」 頭のなかで、いままで得た情報を整理しながら、ふと疑問に思ったことを言おうとした瞬間、室内に第三者の可愛いらしい声が、響く。 「あんた、もうハクとヤッたの?」 ……不つり合いな、内容と共に。
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