904人が本棚に入れています
本棚に追加
「えっ……」
ぴたりと咲耶に筆の先を合わせ、茜が真顔になる。
ふたたび、和紙を取り上げ、硯に筆をつける。
「アタシ達にはそれぞれ、司る“役割”がある。
『赤い神の獣』は、懐胎と生を。
『黒い神の獣』は、破壊と死を。
『白い神の獣』は、治癒と再生を。
民が望めば、それぞれが与えることになっているわ。
だけど」
茜は、口にした言葉を短く記していく。
咲耶は耳で聞きながら、目で確認した。
「“役割”は、アタシ達が行えるものじゃない。
行うのは、『神の獣の伴侶』……つまり、“花嫁”が代行することになっているの。
正確には、“花嫁”の意思でしか扱ってはいけない力───咲耶が言ってた意味の“神力”は、これに相当すると思うわ。
だからアタシ達には遣えないって、言ったのよ」
「えーと……」
頭のなかで、いままで得た情報を整理しながら、ふと疑問に思ったことを言おうとした瞬間、室内に第三者の可愛いらしい声が、響く。
「あんた、もうハクとヤッたの?」
……不つり合いな、内容と共に。
最初のコメントを投稿しよう!