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「あらヤダ。美穂ってば、第一声からお下品ねぇ。
しかも、もう昼前よ? いつまで寝てるつもりだったの?」
「うっさいなー。そもそも、お前が寝かせてくれなかったんじゃんか!」
「なによぉ、そっちがムダに可愛いのがいけないんじゃない。
そんなとこに突っ立ってないで、こっち来なさいよ、こっち!」
パンパンと、自分の側の畳を叩いて言う茜の視線の先にいるのは、栗色の髪を少年のように短くした十七八歳の少女だった。
赤生地の甚平を着ている。
声の可愛いらしさから、容姿もさぞかし……と、思ったが、咲耶の目に映ったのは、ごく普通の顔立ちだ。
「あ、美穂さん……だよね? 私は、咲耶。よろしくね」
「…………言っとくけど、あたしあんたより年上だかんね? 敬語くらい使いなさいよ?」
つかつかと咲耶の側までやって来て、座る。
美穂の言葉に、咲耶はあたふたしてしまう。
「え? えっ? そうなの……ですか? すみません!」
「──な~んてね、冗談だよ、冗談。
あ、実年齢があんたより上っつーのは、ホント。
敬語は、むしろナシの方向で」
咲耶の反応を楽しむためだったようで、美穂は笑いながら咲耶の肩をパシッと叩いてきた。
「ゴメンねぇ。アタシの仔猫ちゃん、性格悪くってぇ」
と、茜が悪びれもせずに、言い添える。
……どっちもどっちのようだ。
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