野良の王

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野良の王

少し前のことだが、近所に大きなオスのシャム雑種がいた。 シェアハウスのような家で母親とともにエサをもらって可愛がられていたのに、飼い主の住人は彼らを野に放って引越していってしまい、それから野良として母猫と頑張って生きてきたやつだ。 うちにも猫がいて、それが綺麗なメスなもんだから、一階の掃き出し窓を開けて網戸にしておくと、彼はうちの猫に「なー」と挨拶しに来る。 そのうち私ら家族とも顔見知りになって、外でいきあうとやっぱり「なー」と挨拶して通り過ぎるのだった。変な野良だなと思いつつ、親しみがわいてきて名前を知らないのでてきとうに「ちゃむ」とか呼んでいた。 母猫は小さいのに、ちゃむは体の大きな猫に育ち、猫好きなおばあちゃん家のガレージに住み着いて、いつの間にか近隣の野良を統べるボスになっていた。
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