Daydream Candy

10/31
前へ
/221ページ
次へ
二十万(にじゅう)でどうだ? アフター代わりってのもナンだが――相手が俺じゃ不満か?」  矢継ぎ早に発せられる信じ難い言葉に瞬きすらままならない。普段のポーカーフェイスからは程遠いような強引さにも驚かされっ放しで、返答どころか抵抗すらもすっかり脳裏から抜け落ちて呆然状態――そんな様子を嘲笑うかのように、龍はわざと挑発的な視線で、今度は少々得意げな笑みを浮かべてみせた。 「けど――満更じゃねえだろ? お前、店でよく俺のこと見てるもんな? ちっとは気があるって証拠だろうが」  とんだ言い草にさすがに黙ってはいられず、 「ふざけんなっ……!」  されるがままを一転、波濤は龍の胸板を思い切り両の掌で突き飛ばした。 「黙って聞いてりゃいい気ンなりやがって……誰がてめえなんか……見てっかよっ! それにっ――、俺がアフターで誰と何しようがそんなん……てめえにゃカンケイねえだろ! 逐一誰とアフター行ったかなんて数えてっ方が普通じゃなくねえ!? 気があんのはてめえの方なんじゃねえのかよ!」  波濤は怒鳴り上げ、だがすぐに気を落ち着けるように大きく深呼吸をすると、開かれた襟元を繕いながら龍に向かって椅子を勧めた。
/221ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2321人が本棚に入れています
本棚に追加