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「あー、信じらんね――! あんたのせいで熱くなっちまったじゃねえか……。まあいい……座れよ。ってもココ、あんたの家だけどよ? とにかく……今のこと、聞かなかったことにしてやるから……とりあえず仕切り直そうや。あんたとゆっくり飲むってこと自体は抵抗ねえから――。ま、仲良く語ろうぜナンバーワン同士!」
矢継ぎ早やに捲し立てると、またひとたび『ふぅ――』と深呼吸をし、
「何か飲むモンくんねえ? 酒は店で嫌ってほど浴びてっから……できれば他のがいんだけど!」
リラックスしたふうにソファにどかりと背を預けながら、明るめにおどけてみせた。
「それにしても……すげえ部屋な? あんたの雰囲気からして洒落た家に住んでそうだなぁとは思ってたけどさ。想像以上っつーか、これじゃ高級ホテルのスイートルームみてえじゃんか。このソファだってめちゃめちゃでけえし、座り心地も最高な! 羨ましい限りだわ」
今度は褒め言葉を並べながら朗らかに笑う。まるで軌道を正すかのように相手の非を責めようともせず、それは普段からの波濤の性質なのか、誰とでも上手く仲良く渡り合おうとする様がひしひしと滲み出てもいるようだった。
こう出られてはさすがの龍も意表を突かれたというところなのか、苦虫を潰したような顔で眉を引きつらせたが、とにかくは言う通りに従わざるを得ない。
致し方なくといった感じで龍はキッチンへと姿を消し、しばらくしてトレーに茶だのソフトドリンクだのの類をごっそりと乗せて戻ってきた。そして注文通りという意味なのか、波濤にはソフトドリンクを勧め、だが自身はボトルの酒をドポドポとグラスに注いだと思ったら、半ばふてくされたように乾杯の仕草をしてみせた。
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