Daydream Candy

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「バーボンかよ? しかもストレートってさ、毎日酒と付き合っててよく家で飲む気になるな……」  呆れたように波濤が横目に訊いたのに対して、龍は更にふてくされたような無表情に拍車をかけると、 「別に――。飲まなきゃやってらんねーだけだ。なんせお前に振られちまったからな」  そう言って、恨めしそうにジロリと視線を投げた。  急に無口になって機嫌の悪そうにしながらも、おとなしく言った通りに従っている。そのギャップが何ともチグハグというか、何だか店で見る一面とは違った表情を見せつけられたようで、不思議と微笑ましさのような感情が湧き上がる。隙がなく、何をされても絶対に突き崩されないような雰囲気の男の意外な一面を垣間見てしまったような気分だ。むくれ気味の感情を隠すでもなく酒を煽る様子にも唖然とさせられる。  いつもは気障でクールな男が無邪気な子供のようにも思えて、波濤はそのコロコロと変貌を遂げる意外性に、何とも言い難い親しみを覚えるような気がしていた。  取っつきにくそうに見えて、実は案外御しやすい男なのだろうか。  仕方ない――少しなら付き合ってやるかという気になり、バーボンのボトルに手を掛ける。すると龍は今までの仏頂面を一転、ほんの一瞬だがフッとやわらかに口元をゆるめてみせた。 「何だ、やっぱりお前も飲むのか?」 「あ、ああ……ちょっとだけならな。付き合おうかなーとか……」
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