Double Blizzard

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「この店、男の客も入れるんだろ?」  明らかに常連客ではない男の四人連れが、ふてぶてしい態度でナンバーワンの波濤を指名してよこしたのは、つい一時間ほど前のことだった。 「……いらっしゃいませ。はい、勿論でございますが……お客様、当店にお越し戴くのは初めてでいらっしゃいますか?」  何だか良からぬ雰囲気の男たちを目の前にして、少々緊張しつつも平静を装い対応した。 「何? ここって一見はお断りなわけ?」  他の三人を背に従えながら顎をしゃくり上げ、侮蔑丸出しといった調子で訊いてよこす男は、パッと見たところあまり好ましくない客である。が、だからといって無碍(むげ)に扱うわけにもいかない。とりあえずは丁寧にマニュアル通りの応対を心掛けるしかなかった。  するとその男は店の入り口に並べられたホストたちのパネルを見渡しながら、薄ら笑いを浮かべてこう言った。 「この……ナンバーワンの”波濤”っての? こいつがいいや。指名してやるからすぐに呼べや」 「……波濤でございますか。申し訳ございません、ただいま波濤は別のテーブルに付いておりまして、少しお待ちいただくか、よろしければ他のホストでも……」  極めて丁寧を装いつつ、そううながした側から、少々苛ついたように『却下!』と強い語尾で返された。
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