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「ふん――。なら作ってやる。ストレートでいいか? それとも薄めるか?」
「あー、割ってくれる? さすがにストレートはキッツイ」
それからは店のこと、互いの失敗談、同僚たちのことなどを始め、たわいもない話題にしばし花を咲かせ合った。
高度数の酒は、少量を舐める程度でもほろ酔い気分にさせるらしく、波濤は先刻からの緊張も相まってか、奇妙でいて心地の好いような、不思議な疲労感に深くソファへと背を預けていた。
一方の龍の方もだいぶ酔いが進んでいるのか、反対側のソファの肘掛けに長い脚をだらしなく投げ出したりしている。相も変わらずの無表情のせいか、時折クスッと笑ったりするのが妙に新鮮で、その度にドキリとさせられるのを除けば、至って心地好いひと時だと思えた。
そんな仕草のせいで思い出してしまったのは、店での龍の接客態度だ。波濤はほろ酔い気分のままに、
「なぁ、さっき言ってたアレ――。店で俺があんたを見てるってやつ。あれって別にヘンな意味じゃなくってだな」
ふと、先刻の続きへと話題を振った。
「んー?」
「店であんたのこと見てるとか何とか抜かしてたろ? あれの言い訳ってんじゃねえが……ちょっとあんたの接客方法が変わってっから興味あったわけ。そんで見てたのー。そんだけ!」
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