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「……こんなこと、したくなかったけど……最後の手段使っちまった……」
波濤は自らの腹を抱えるようにうずくまりながらも、バツの悪そうに笑ってみせた。
「相手は何人いたんだ。お前一人で片付けたのか……?」
「ん、全部峰打ちしたつもりだけど……暗かったし、俺は……思ったように動けなかったから……結構な重症負ってるヤツもいる……かも」
「峰打ちって……お前……」
波濤が武道に長けているなどと聞いたことはないし、今までそんな気配を感じたこともない。龍はますます怪訝な思いに眉をしかめてしまった。
「じいちゃんが……教えてくれたんだ。いざって時の為の護身術だ……っつってさ」
「じいちゃん――?」
「ああ、俺を育ててくれたじいちゃん……。他人に暴力振るうなんて、あんま……したくねえけど……輪姦されそうになって……仕方なくな」
その言葉に龍はより一層険しく眉をしかめた。
「輪姦し……だと?」
「ん、それ動画で撮って売りさばくとか抜かしやがるからさ。これはもうきれい事言ってる場合じゃねえって思って」
「黄大人――か」
ポツリと呟かれた龍のひと言に、波濤は驚いたように瞳を見開いた。
「じいちゃんを……知ってるのか?」
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