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そう訊き掛けた時だった。扉の向こうで男たちが意識を取り戻したのだろう、『ふざけやがって』などとほざきながら、ドアに体当たりをするような鈍い音が響いた。そこへ、ちょうどタイミングよく帝斗たちが追いついてきた。
「龍! 波濤は見つかったのか……!?」
部屋へと飛び込んで来るなり帝斗にも波濤の無事が分かったのだろう、ホッと安堵に表情を緩めてみせた。
「――帝斗、こいつを頼む」
龍は自身のスーツの上着を脱いで波濤に被せると、帝斗に彼を預けて立ち上がった。うるさい狼どもを再び眠らせてやる為だ。愛しい波濤に不埒なことをしようとした獣どもを許し置けるはずがない。が、そんな龍の後ろ姿を見やりながら、
「龍……ッ、お前一人……そいつら全部で六人だぞ!」
波濤が心配して咄嗟にそう叫ぶ。よもわくば龍と一緒に自身も参戦しようと身を乗り出すのを、側で帝斗が笑いながら制した。
「大丈夫。あいつなら一人で平気さ」
「けど、オーナー……」
「あいつも自分の手で落とし前を付けたいだろうしね。とにかく心配しないでいいから、僕らは先に階下へ降りていよう」
帝斗は波濤に肩を貸して担ぎ上げると、一足先に車まで戻ったのだった。
◇ ◇ ◇
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