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そうだ。好きだとか惹かれるという気持ちが先立って、肝心なことを見ようともしなかった。良く言えば、見る余裕がなかったというのが正しいにせよ、波濤を孤独の渦中に置き去りにしていたことに違いはない。
「お前に惚れ過ぎて、とにかく自分のものにしてえって、それしか頭になかった。こんなバカな俺だが、お前を愛してるって言葉に嘘偽りはねえよ。これからは辛えことも嬉しいことも二人で分かち合う。約束する」
温かく大きな大きな掌で両の頬を包み込みながらそう言って瞳を細める龍を見上げながら、波濤はまたボロリと涙した。
「龍――好きだ。お前だけ……お前だけ――。もう他の誰とも寝たり……したくねえ。お前にしか触られたくねえ……」
「当たり前だ。お前を誰にもやったりするもんかよ――! お前は俺だけのものだ。俺もお前だけのものだ」
力強い瞳が射るように見下ろしてくる。熱くて溶けてしまいそうな熱視線に見守られながら、波濤は目の前の逞しい胸板にすがり付いた。
「俺、俺……さ、お前と寝た初めての……あの日から……誰ともしてねえよ」
「波……濤?」
「……誰ともしたくなくて……アフターも全部断った……。金の工面が間に合わなくなるの分かってたけど、嫌だったんだ。お前以外の誰かと身体を重ねることが……すっげ辛かったから」
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