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そう、そのせいで菊造へ手渡す金が滞ったのだ。枕営業を止めた分、通常の店内営業だけで頑張ろうとしたが、もともと人の好い波濤のことだ。客の女性たちに無理をさせることもできなかったのだ。
そんな波濤の心の内を聞いて、龍はますます愛しい想いに心臓を鷲掴みされるようだった。
「波濤――抱くぞ」
重ね合った身体の中心、龍の雄もこの上なく膨張して、淫猥な薬を盛られた波濤以上にというくらい大きく硬く張り詰めていた。
「ん、うん……。俺も欲し……お前の」
「欲しいか――? 俺のが――」
もしかしたら、また理性を失うくらい興奮して――お前に苦しい思いをさせるくらい激しい抱き方をしちまうかも知れねえが――
「勘弁な、波濤――」
「ん……」
分かってる。大事に扱ってもらうよりも、そんな余裕がないからこその乱暴とも思える抱かれ方が心地いいんだ――
二人は互いのすべてをもぎ取るように熱く激しく絡み合い、抱き合った。
カーテン越しに窓の外が白々とするまで、休む間もなく求め合ったのだった。
◇ ◇ ◇
波濤が目覚めたのは、すっかりと陽も暮れ掛かった夕刻のことだった。
もう宵闇が降りてきそうな二月末の夕暮れ、春待ち顔の街の雑踏を遙か下に見下ろす大パノラマの窓辺に佇み、波濤はぼうっと夢心地でいた。
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