Double Blizzard

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 目覚めた時、龍の姿はなく、昨夜とはまた別であろう真新しく糊のきいたシーツが設えてあるベッドにいた。昨夜、ここへ運び込まれた時には気付かなかったが、相当な高層階の――見たところ高級ホテルのような豪華な部屋だ。  枕元にあった龍の直筆らしきメモを見つめながら、自然と頬が緩む。 *  風呂を沸かしてあるから、入れるようならゆっくり浸かってこい。俺は所用で出掛けるが、すぐに戻る。電話しろな? そうしたらすっ飛んでお前の元に帰るぜ(`´)b *  見慣れない顔文字が使ってある。しかも手書きだ。  どんな顔をしてこれを書いていったのだろう。あの龍が顔文字まで使ってこれを書いている姿を想像すれば、波濤は口元がほころんでしまうのを抑えられなかった。  風呂を出て、用意されていた服をまとい、再びパノラマの窓辺に立てば、眼下はすっかりと夜の闇に包まれていた。所々にイルミネーションが輝き、行き交う車のライトが見事なほどに煌めく帯を作っていく。  いつもの龍のマンションから見る夜景も大層なものだったが、ここはまた更に趣きがある部屋である。 「ひょっとして……この家もあいつの持ち物なのか……?」
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