Flame

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 そんな龍だが、時が経つにつれて誤解も解け始め、彼の意外にサッパリとした性質や人懐こい面なども知られるようになってからは、和気藹々と馴染めるようになってきた。今日も今日とてダークなスーツを粋にまとい、さりげなさの中にも高級感が漂う出で立ちで登場した彼に、皆も相変わらずだと微笑ましげだった。  そんな龍の隣には、入店以来トップの座を貫いてきた不動のナンバーワンホストの波濤が、にこやかな笑みと共に(たたず)んでいた。  龍のそれとは対照的な淡い桜色のスーツは、他の誰かが着たのならば派手に映るか、一歩間違えば子供の七五三だと笑われそうなチョイスだが、そこはさすがのナンバーワンだ。色白の肌と端正な顔立ちを見事に引き立てていて、優雅で色気を感じさせる着こなしに、あちこちから溜め息が上がるほどだった。 「一ヶ月も音沙汰無しだなんて……一体今まで何処で何してたってんですかッ!」 「そうッスよー! 引退イベもしないで突然辞めましたって聞いて、しばらくパニックになったッスから!」  ホストたちに取り囲まれて矢継ぎ早の質問に、龍はともかく波濤の方はタジタジと苦笑気味だ。 「悪かったよ。ちょっと所用でな、故郷に帰ってたんだ。お前らには心配掛けて済まない」  謝る波濤に、皆からの声も止まない。 「今日からまた戻ってきてくれるんスよね? もうお客の女の子たちからも、波濤さんたちはどうしたんだって質問攻めなんスから!」
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