Flame

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 一方、あの拉致騒動の夜、無事に波濤を救出することができた龍は、初めて彼から本当の気持ちを聞くことが叶った。  今までは互いに好意を寄せていることが分かってはいても、はっきりと波濤の口から『好きだ』という言葉を聞けずにいたのだが、拉致されてあわや輪姦されそうになり、いかがわしい薬を盛られて動画まで撮られそうになった。そんな究極の状況が、閉ざされていた波濤の素直な気持ちを解放した――ということには苦笑せざるを得ないが、とにかく龍はもう二度とこの愛しい男を手放す気がなくなったのである。  波濤が無事に腕の中に戻ってきた時には、側に置いて、できることなら一生誰の目にも触れさせたくないと思うほどに、龍は焦燥感に駆られた。そんな思いを具現化すべくというわけでもないが、龍は波濤がこの先もホスト稼業を続けることに難色を示したのだ。  香港マフィアの頭領の息子であり、この日本でも数多の大企業を経営する龍にとって、愛する者一人を養うくらい造作もないことである。彼は波濤に仕事を辞めて自分の傍にいて欲しいと申し出たのであった。
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