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甘く息苦しい吐息の交叉する中で、波濤は目の前の生理的な欲望にだけ没頭したいというように、逞しい腕の中で無心になるしかできずにいた。
◇ ◇ ◇
「大丈夫か――身体、辛くねえか?」
背後から抱きすくめられたまま、半ば放心状態でベッドに身を投げ出していた。
「大丈夫なわけねえだろが……。ったく、容赦なくヤりやがって……。野郎同士なんて見下したようなこと言ってやがったくせに……てめえこそ他人のこと言えた義理かよ」
男と寝ることに慣れているとまでは言わないが、まるで抵抗も戸惑いもなく、ごく自然に没頭していたところを見ると、まるっきり初めてではないのだろうといった恨み調子で、波濤は毒づいた。
「見下してなんぞいねえさ。男だろうが女だろうが好きなヤツと寝るのが悪いだなんて言ってねえ。まあ、俺は男とはお前が初めてだが――」
嘘をつけ!
波濤はそう思ったが、『男はお前が初めて』という台詞に、心のどこかで安堵感が湧き上がるような気がしたのも否めない。そんな思いを振り払うように咄嗟に顔を背けた。
だが龍はそんな素っ気ない仕草にも全く動じずといった調子で、未だ後方から抱き包みつつ髪を撫でたりしてくる。
「――なぁ、波濤。もうこんりんざい客の男と寝るのはやめにしてくれねえか」
「は――?」
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