Daydream Candy

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 戸惑いを振り払うように起き上がり、ベッド脇へと腰を掛け、波濤は逃げるように龍の手を振り払った。 「あのよ、今日はなんかいきなりヘンなことになっちまったけど……火遊びってことにして忘れてやっから……くだらねえこと抜かしてんなよな」 「俺は火遊びをしたつもりなどない」 「……ッ、ならどんなつもりだよっ!? 第一てめえ、最初に一発いくらとか訊いてきただろうが! 遊ぶつもりだったろ……!? だったらそれでいいじゃねえか。今まで通りただの同僚ってことで……」 「あれは単に口実だ。そうでも言わなきゃ、お前が真面目に取り合ってくれそうもなかったからだ」  そのひと言に波濤は驚いたように龍を振り返り、ほんの一瞬視線が互いを捉え合った。そして大きな掌が愛しげに、頬と、そして髪をも撫でる――。 「お前、店でもそうだよな? 誰にでも愛想良くして、一見取っつき易そうに見えるが、本当の自分はぜってー見せねえだろ。広く浅く両手を広げて誰でも分け隔てなく受け入れる。如才ないヤツなのかと思いきや、ちょっとでも踏み込まんと近付けば、途端に甲羅を固くして遠ざけちまう」 「は……? 何、急に……」
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