Daydream Candy

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「誰にも本当の自分を見せねえ奴だって言ってんだ。寂しさとか、弱さとか、逆に怒りでも――そういうもんを全部封じ込めて、自分の綺麗なところだけを表に出してる。確かに商売の上では立派だとは思うが、お前自身はそれで幸せなのか? 心から笑い合ったり、悩みや愚痴を言い合えるダチを作るわけでもねえ。誰にでも明るく振る舞って、それじゃ機械仕掛けの人形も同然だ。お前が楽しそうに笑う度に、俺にはひどく辛そうに見えるんだがな」 「や……めろっ……!」  波濤は怒鳴り上げた。 「そういう苦しさを紛らわせる為に客と寝たりして自分を貶めてる。わざと汚ねえ部分を作ることでお前はバランスを保ってるんだ。違うか?」  辛辣極まりない毒舌を淡々と突き付けられて、身体中から魂を吸い取られるような感覚に波濤はガクガクと身を震わせた。 「黙って聞いてりゃ……何なんだよ……っ、好き勝手……抜かしやがる……!」  無意識の内に涙があふれては、寝乱れた白いシーツの上にボタボタとこぼれて落ちた大粒の跡が目に痛い。  会って間もない他人に自身の内面を(えぐ)られるようなことを言われるとは思ってもみなかった。  まるで今の自分の格好さながらだ。突如無抵抗にさせられ、無理矢理服を剥ぎ取られて裸にされていくかのようだ。  身体だけではない、心もすべてを丸裸に剥かれる気分だった。  自分でも見ないようにしてきたことだ。  楽しい時間が一時(いっとき)の幻であってもいい。  賑わいの去った後、孤独が待っていようとそれでよかった。  寂しいとは思わない。俺にはそんなのが合ってる、そう思ってきた。  それなのに出会って間もないこの男にいきなり真髄を突き付けられた。
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