Daydream Candy

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「うわっマジッ!? それじゃ本末転倒じゃね? どっちがホストってか、客がホステスってか?」 「やっぱ頭領? ありゃホストじゃねえーーー!」  あんな奴がどうして六本木でナンバーワンを張っていられたのか皆目不思議――  というのが新宿店のホストらのほぼ一致した見解だった。 「まぁまぁ、そうトガりなさんな。皆仲良く! それがこの店のモットーだろうが?」  後輩らの愚痴を聞き(なだ)めながら、かくいう波濤自身もある種唖然とした思いで龍を見ていたのは事実だった。  確かに彼は一風変わっていた。今まで客が第一、できる限りの明るさともてなしでサービスするのが信条だった波濤にとっては、楽しく場を盛り上げることを何より大切にやってきたつもりだ。結果、ナンバーワンとなってからも、ベテラン、新人、ヘルプを問わずに同席に付いた者は分け隔てなく、時には自ら進んで道化を買って出たりもするし、とにかく来てくれた客に目一杯楽しんでもらうことが目標だった。  ナンバーワンの波濤がそんなふうだから、店の後輩ホストらも比較的伸び伸びとしていて、雰囲気は明るかった。そこへ突如、まるっきり水の違う男が入ってきたわけだから、店内の雰囲気も一転、次第に焦れたり愚痴ったりする者が現れても当然といったところか。
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