Daydream Candy

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 波濤は皆を宥めながらも、だが反面、この龍という男に不思議な興味を引かれていたのも否めなかった。  自分とはまるで正反対のやり方――客を楽しませるどころか、彼に寄り添い入店してくる女性客らの様子を窺っていると、大概は少し緊張したような面持ちで長身のその背中に隠れるようにして席に着くのが非常に印象的で、とにかく見たこともない手腕に強く興味を持ったのは確かだ。  後輩らの言うように、客に煙草の火を点けさせているところを目にしたこともある。  席にいる彼はおおよそ酒を作ることもなければ、会話を楽しんでいるふうでもないことが多い。客の女性らは恥ずかしそうにうつむき加減で、遠慮がちにグラスの酒を口にする――そんな様からは、手持ち無沙汰というのがありありと窺えるようでもある。  当の龍はといえば、そんな中にあっても我関せずで脚を組み、まるで自分は一国一城の主とばかりに、どっかりとソファの中央に腰を落ち着けたままだ。側ではヘルプに付いた後輩ホストが、緊張の面持ちで一心不乱に酒のグラス片手にトングを握り締めている。
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